マネージドサービスとサーバーレスの違いは?
という方もいるかもしれません。
マネージドサービスとサーバーレスは、似ている部分もあるので混同しやすいですよね。
今回は「マネージドサービスとサーバーレスの違いについてわかりやすく解説」についてお伝えします。
基礎から比較、運用面やコスト、選び方まで幅広く解説しますので、導入を検討している方は記事を読んでみてくださいね。
マネージドサービスとサーバーレスの違いをわかりやすく解説
ここではマネージドサービスとサーバーレスの違いを初心者にも伝わるように丁寧に説明します。
用語の定義や設計思想の違いを押さえることで、どちらを選ぶべきかが見えてきます。
まずは概念的な違いから整理し、その後で運用やコスト面、拡張性の観点から具体的に比較します。
基本の違いの整理
マネージドサービスとサーバーレスは役割や責任範囲が異なります。
マネージドサービス:クラウド事業者が基盤やミドルウェアの運用を代行する。
サーバーレス:実行環境の抽象化によりユーザーがインフラを意識せずコードを実行できる。
両者の特徴を表で比べると以下のようになります。
観点 | マネージドサービス | サーバーレス |
---|---|---|
管理範囲 | OSやミドルウェアの一部を提供者が管理 | 実行環境が抽象化され、ほぼ管理不要 |
利用方法 | インスタンスやサービスを構成して利用 | 関数やイベント単位でコードをデプロイ |
向き不向き | 複雑な構成やカスタム設定が必要な場合に有利 | 短時間実行やイベント駆動、スケーラブルな処理に有利 |
運用負荷の差
運用負荷という観点は選定で非常に重要になります。
マネージドサービスはベンダーが多くの運用作業を肩代わりしますが、設定やパッチ適用の方針決定は利用者に残ることがあります。
サーバーレスはインフラ運用の多くが不要になる代わりに、関数の実行時間やコールドスタート、状態管理といった運用上の留意点が出てきます。
以下に運用負荷の観点別にチェックリストとして項目を挙げますので、導入前の確認にお役立てください。
運用負荷の観点のポイント
- 監視とアラートの設計はどちらでも必要。マネージドはサービス指標、サーバーレスは関数実行指標を重視する。
- パッチ適用やセキュリティ更新はマネージドで軽減されるが、設定ミスはユーザー側の責任になることが多い。
- スケーリング動作の理解。サーバーレスは自動スケールが強力だがコントロールは限定的。
- コスト最適化のためのログやメトリクス整理は両者で必要。サーバーレスでは高頻度の関数実行が想定外コストになる場合がある。
コストの見え方と比較
コスト構造はマネージドサービスとサーバーレスで大きく異なります。
マネージドサービス:リソース単位やインスタンス単位での固定費や時間課金が中心になりやすく、常時稼働のワークロードに向いている。
サーバーレス:実行時間やリクエスト数に基づく従量課金が主で、断続的な処理やピーク対応が多い場合にコスト効率が高くなる。
主なコスト要素を表にまとめると以下のようになります。
項目 | マネージドサービス | サーバーレス |
---|---|---|
課金単位 | 時間・インスタンス・転送量などの固定要素が中心 | 実行時間・リクエスト数・メモリ量などの従量課金が中心 |
コストの予測性 | 比較的予測しやすいが利用率に依存 | 利用パターンにより変動しやすく、短時間高頻度で増大することがある |
コスト最適化の手法 | リソースサイズの最適化やリザーブドインスタンス | 関数のランタイム最適化やコールドスタート対策で削減 |
拡張性の違いとスケーリング挙動
拡張性の設計はシステムの将来性に直結するポイントになります。
マネージドサービスは多くの場合、垂直・水平スケーリングの両方をサポートしますが、手動設定や限界値が存在します。
サーバーレスは自動で水平スケーリングする能力が高く、急なトラフィック増にも迅速に対応しますが、コールドスタートや並列実行数の制約がボトルネックになることもあります。
拡張性を考慮するときの技術的ポイントと運用上の注意点
- スケーリングポリシーの理解。マネージドはしきい値ベース、サーバーレスはイベント駆動が中心。
- 並列実行数制限の確認。サーバーレスでは同時実行数上限があるため要設定や引き上げ申請が必要な場合がある。
- 状態管理の手法。ステートフル要求が多い場合は外部ストレージ設計が必須になる。
水平スケーリングはサーバを横に増やして処理を分散する方法で、負荷分散や高可用性の実現に向いています。
垂直スケーリングは単一サーバのCPUやメモリなどのリソースを増強して性能を上げる方法で、設定が簡単ですが物理的な限界があります。
項目 | 水平スケーリング | 垂直スケーリング |
---|---|---|
拡張手法 | サーバを追加して負荷を分散 | 既存サーバのCPUやメモリを増強 |
利点 | 高可用性と柔軟な拡張性 | 導入が比較的簡単で即効性がある |
欠点 | 設計やデータ分割が複雑化する場合がある | 物理的な限界とコスト増が発生しやすい |
選び方のポイント
実際にどちらを選ぶかの判断材料を整理します。
ポイントは要件の性質、予算、チームのスキルセット、運用体制、成長予測など複数あります。
例えば、
短時間のバッチ処理やイベント駆動のAPIにはサーバーレスが適し、
長期間安定稼働する大規模なデータベース処理やカスタムミドルウェアが必要な場合はマネージドサービスが有利になります。
チェックポイント
- トラフィックが突発的で変動が大きいかどうかを確認する。変動が大きければサーバーレスが有利なことが多い。
- カスタム設定や独自ミドルウェアが必要かどうかを確認する。独自性が強ければマネージドの柔軟性が有利。
- チームの運用負荷を下げたいかどうか。運用を極力外部に委ねたいならマネージドが向くことがある。
導入検討で確認すべき技術要件
導入前に技術的にチェックすべき要件をまとめます。
要件の洗い出しが不十分だと、導入後に想定外の手戻りが発生することがあります。
接続方式やレイテンシ要件、トランザクション要件、外部システムとの連携など、事前に明確にしておくべき項目を中心に解説します。
ネットワークと接続要件
ネットワーク設計は性能やセキュリティに直結する重要な要素です。
マネージドサービスでもVPC接続やプライベートサブネットの設定が必要な場合があり、サーバーレスでも外部リソースにアクセスする際のVPC接続が性能面での影響を及ぼすことがあります。
接続方式とそのメリット・デメリット
項目 | 考慮点 | 注意点 |
---|---|---|
VPC接続 | プライベートリソースへ安全に接続可能 | 設定ミスでアクセス不能になることがある。接続時間やレイテンシに注意。 |
パブリックアクセス | 通信が簡便で運用が容易 | セキュリティリスクを適切に管理する必要がある。 |
エンドポイントの冗長化 | 可用性向上に寄与 | コストと複雑性が増す可能性がある。 |
VPC接続とは、クラウド環境内で仮想プライベートネットワーク(VPC)を介してリソースを安全に接続する仕組みです。
ネットワーク分離やアクセス制御(誰がどの通信を許可するかの設定)を行い、インターネット経由の不要な通信を限定してセキュリティを高めます。
VPCとは仮想プライベートクラウドの略で、論理的に分離されたネットワーク領域を指します。
異なる接続方式やルーティング、認証の違いにより運用の注意点が変わるため、用途に応じた設計が重要です。
項目 | 説明 |
---|---|
定義 | クラウド内で分離された仮想ネットワーク領域 |
利点 | 通信の制御やセキュリティ強化が可能 |
用途 | データベース接続やバックエンド連携、ハイブリッド構成 |
注意点 | ルーティング設計やアクセス制御の誤設定に注意 |
レイテンシ
ユーザー体験に直結するレイテンシは見落とせません。
※レイテンシ:通信の遅延時間。
サーバーレスはコールドスタートによって初回応答が遅れることがあるため、低遅延が必須のAPIなどでは注意が必要です。
マネージドサービスは常時稼働のインスタンスを用意することで安定したレスポンスを得やすい反面、コストが増える可能性があります。
セキュリティとコンプライアンス
セキュリティ要件は業務上の必須項目です。
マネージドサービスもサーバーレスも、責任共有モデルに基づきクラウド事業者とユーザーの双方で責任を分担します。
データの暗号化やアクセス制御、監査ログの保持などは、どちらを選んでも設計必須の項目です。
代表的なセキュリティ対策とその影響
対策 | 影響先 | 備考 |
---|---|---|
アクセス制御(IAM) | マネージド・サーバーレス共通 | 最小権限の原則でロールを設計する必要がある。 |
データ暗号化 | マネージド・サーバーレス共通 | 保存時・転送時の両方で暗号化を検討する。鍵管理も重要。 |
監査ログ | マネージド・サーバーレス共通 | ログの保持期間やアクセス制御を定めること。ログ量に伴うコストにも注意。 |
運用と監視の実務ポイント
運用面での具体的な設計と監視体制も選定の重要な要素です。
マネージドサービスとサーバーレスでは監視すべき指標や対応フローが異なるため、どちらでも適切に設定しておく必要があります。
というわけで、運用ルールや監視項目、障害対応の流れを中心にわかりやすく解説します。
監視すべき主要指標
監視項目はサービスの種類によって重点が変わります。
マネージドサービスではインスタンスのCPUやメモリ、ディスク使用率が重要であり、サーバーレスでは関数の実行時間、エラー率、呼び出し数などが中心になります。
どちらでも共通するのはアラート条件の閾値を適切に設定し、ノイズを減らすことが運用負荷低減につながる点です。
主要指標の一覧
- CPU使用率やメモリ使用率、ディスクI/Oなどのインフラ指標。マネージドで重要。
- 関数実行時間、エラー率、同時実行数などのファンクション指標。サーバーレスで重要。
- APIレイテンシ、スループット、依存サービスのヘルスチェックなどのエンドツーエンド指標。共通で重要。
障害対応フローの設計
障害は事前にフローを作っておくことで影響を最小化できます。
発生時の責任範囲やエスカレーション手順、障害の分類基準を明文化しておくことが肝要です。
マネージドサービスの場合はベンダー対応の流れを確認し、SLAや連絡窓口を事前に整備しておくとよいでしょう。
サーバーレスの場合はログとトレーシングを充実させることで、原因特定のスピードが格段に上がります。
障害対応の主要項目
項目 | 推奨対応 | 備考 |
---|---|---|
初動対応 | 自動フェイルオーバーやキャッシュ切替を即時実行 | 手順書化しておくことが重要 |
原因追跡 | ログ・トレース・メトリクスを横断的に確認 | 分散トレーシングが有効 |
ベンダー連携 | サポート窓口へ迅速にエスカレーション | SLAや連絡フローを事前に合意しておく |
運用自動化のポイント
運用の自動化はコスト削減と品質向上に直結します。
インフラのプロビジョニングやデプロイ(いつでも利用できる状態にすること)、自動復旧までをコード化するInfrastructure as Codeの採用は、マネージドでもサーバーレスでも効果的です。
イベント駆動での自動化やランブック(作業手順書)の自動実行など、実運用で使える自動化のアイデア
- Infrastructure as Codeを用いた環境構築でヒューマンエラーを削減する。
- CI/CDを用いた自動デプロイとテストで品質を担保する。
- 自動復旧スクリプトや監視連携でMTTR(平均復旧時間)を短縮する。
コスト試算と導入後の最適化方法
導入前のコスト試算と、導入後に継続的に最適化するための考え方を解説します。
初期試算だけでなく、成長見込みや運用コストも含めたトータルコストでの比較が重要です。
また導入後は定期的なレビューとチューニングを行うことで、想定以上のコスト増を防げます。
初期試算のポイント
初期試算では利用パターンの想定が鍵になります。
マネージドサービスは予約型や長期契約で割安になるケースがあり、サーバーレスは従量課金で短期的には安く見える場合が多いです。
想定トラフィックやピーク時の同時実行数を踏まえて試算することが重要です。
試算時に確認すべき項目
- 想定リクエスト数とピークトラフィックを明確にする。。
- 必要なメモリ量や実行時間の想定値を計測ベースで決める。。
- データ転送量やストレージ使用量の見積もりも忘れずに行う。。
継続的なコスト最適化
導入後は実測データを基にチューニングを行います。
マネージドサービスではリソースのサイズ見直しやリザーブドプランの活用、サーバーレスでは関数のランタイム最適化やバッチ処理の統合などが有効です。
定期的なコストレビューのフローを作り、改善アクションを明確にしておくと良いでしょう。
最適化の代表的な施策
フェーズ | 施策例 | 期待効果 |
---|---|---|
分析 | リクエスト/実行時間/メモリ等の計測 | ボトルネックと過剰プロビジョニングの洗い出し |
実行 | 関数の最適化やインスタンスサイズの見直し | コスト削減と性能維持 |
運用 | リザーブや割引プランの活用、不要リソースの停止 | 長期的なコスト削減 |
成長フェーズでの考え方
サービスが成長すると要求が変わり、最適なアーキテクチャも変化します。
初期はサーバーレスで素早く立ち上げ、スケールや特殊要件が出てきた段階でマネージドサービスや専用インフラに移行するハイブリッド戦略も有効です。
移行時のダウンタイムやデータ移行計画も含めて長期ロードマップを考えておくと安心です。
成長フェーズで検討すべきポイント
- 初期は運用負荷を下げるためサーバーレスを採用し、要件増大で段階的に移行を検討する。。
- 既存データの移行計画を早期に設計しておくとスムーズに移行できる。。
- ハイブリッド運用のコスト・運用体制もあらかじめ評価する。。
マネージドプランがあるレンタルサーバー
以下はマネージドプランがあるおすすめレンタルサーバーです。
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マネージドサービスとサーバーレスの違いについてわかりやすく解説 まとめ
というわけで今回は「マネージドサービスとサーバーレスの違いについてわかりやすく解説」についてお伝えしました。
導入検討時には技術要件、運用体制、コスト構造、将来の成長性を総合的に判断することが重要です。
どちらが自社の要件に合うかイメージしてみてくださいね。
というわけで、今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。